K@はぐれ医師の徒然日記

書評や日々の出来事など

書評 「多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織 マシューサイド」

なんとなく多様性って大事だよね、、という程度の認識だったが、多様性に対する解像度が劇的に上がった。

どれだけの天才であっても1人の人間の能力には限界がある。また同質の天才を集めても多角的な観点を持つことができず、死角が生じる。さらに性質の悪いことに同質の人間同士では、異論が生まれない為、自分たちの意見を正しいと過信してしまう。
複雑な問題に対処するためには、単に人口統計的に多様な人材を集めればよいというわけではなく、異なる視点をもつ(=認知的多様性がある)エキスパートを集めることが重要だという点がこの本の核心だと思った。(認知的多様性あってもずぶの素人では役に立たない。)

しかし認知的多様性のある集団であっても、うまく機能しない場合がある。それはヒエラルキーが下の人間の意見を黙殺する集団である。このような集団を支配型ヒエラルキーという。
それと対極に位置するのが尊敬型ヒエラルキーである。尊敬型ヒエラルキーで形成される集団は、リーダーに対する敬愛でつながっており、どの階層に位置する者の意見であっても尊重される。
このような組織は心理的安全性が担保されており、「反逆のアイデア」が生み出されやすい。。

またイノベーションが移民の多角的な視点、前提を疑う考え方から生じるという意見は「RANGE(デイビット・エブスタイン著)」でも指摘されており、欧米の科学者はお互いに影響しあって、ある程度の共通の認識があるのだと感じた。

栄養に関する画一的なガイドラインが個々の多様性(マイクロバイオーム、遺伝子など)を無視しているという点は医師として興味深かったし、ホモサピエンスネアンデルタール人に勝った要因は社交性であるという指摘は「サピエンス全史」の「共同幻想」のことであるとか、集団が共有する「集合知」は「知ってるつもり 無知の科学」でいうところの認知的分業であるとか、これまでの知識がリンクして知的興奮が得られた。